「別の伝承」群の四つ目は、これまでで最も短く、そして最も欠損の少ない断片です。全九行、呪文の冒頭部分にあたるこの短い詩は、川そのものに呼びかけるという、変わった形をとっています。

おお、川よ、すべてのものを創った者よ

「おお、川よ、すべてのものを創った者よ、大いなる神々があなたを掘り出したとき、彼らはあなたの岸辺に繁栄を置いた、あなたの中に、深淵の王エアは彼の住まいを創った、あなたが存在するより前に、彼らは洪水を送らなかった! 火と、怒りと、威光と、恐怖を、エアとマルドゥクはあなたに授けた! あなたは人類の訴えを裁く! おお、川よ、あなたは強大だ! おお、川よ、あなたは至高だ! おお、川よ、あなたは正しい!」(別の伝承IV 1〜9行より)

マルドゥクでも、エアでも、名もなき神々でもなく、川そのものが「すべてのものを創った者」として呼びかけられる――この本のなかで、これまで出会わなかった創造主の姿です。

この川の正体は、ユーフラテス川

底本の注は、この神秘的な「創造の川」が、明らかにユーフラテス川から着想されたものだと述べています。バビロニアの豊かな実りは、その水に大きく依っていました。人びとの暮らしを支える現実の川が、ここでは、洪水よりも前から存在し、神の住まいを内に宿す、宇宙的な創造者にまで高められているのです。

楽園の川、そしてナイルの神との類似

底本の序論は、この創造の川への呼びかけを、『創世記』で楽園を潤し、そこから四つの支流に分かれて流れ出た川や、エゼキエル書47章に語られる命を与える流れと比較しています。さらに、エジプト神話のナイルの神ハピ――原初の創造神の大半と同一視されるようになり、「万物の創造者」と宣言された神――との類似も指摘されています。国を潤す大河を、世界そのものを生み出した神格として崇める発想は、バビロニアだけのものではなかったのです。

「万物を形づくった者」――ティアマトにも使われた言葉

底本の注は、もう一つ興味深い可能性を示唆しています。この創造の川は、冥界の川フブルと同一視されていたのかもしれない、というのです。そして、この川をたたえる「すべてのものを創った者」という句は、第一書板で竜ティアマトを描写する句――「万物を形づくった[ウンム・フブル]」――と響き合っている可能性があるとされています。ウンム・フブルは「母フブル」を意味する、ティアマトの称号です。恵みをもたらす川と、神々に刃向かった竜。対照的な二つの存在に、同じ言葉が捧げられていたのかもしれません。

呪文は、ここで終わらない

底本の注によれば、写本によって、この九行に続けて、それぞれの祈願者――呪文を唱えた本人――の個人的な願いが書き加えられていたようです。つまりこの九行は、決まり文句として繰り返し使われた、呪文の「導入部」だったことになります。川への賛美そのものは、どの写本でも変わらず、そのあとに続く個々の願いだけが、唱える人ごとに違っていたのでしょう。

次の記事では、「別の伝承」群の最後――塵からマルドゥクが人類を形づくる、もう一つの創造神話を見ていきます。