「別の伝承」群の三つ目は、これまでで最も短い部類に入りますが、内容ははっきりしています。一枚の書板に、同じ主題を扱う二つの異本――シュメール語版とセム語版――が並んで刻まれているのです。キングはこれを「月と太陽の創造への言及」と呼びました。
シュメール語版――月が現れる
断片の前半(1〜7行)はシュメール語です。「神々であるアナ、エンリル、エンキが、彼らの確かな助言と、彼らの偉大な命令によって、月の神の更新を定め、月の再び現れることと、ひと月の創造を定め、そして天と地の託宣を定めたとき、アナは新月を現れさせた、天のただ中で、彼はそれが現れ出るのを見た。」(別の伝承III 1〜7行より)。アナ、エンリル、エンキは、メソポタミア神話で古くから並び立つ三柱の神です。この三柱の合議によって、月の運行そのものが「定められる」場面から、断片は始まります。
セム語版――太陽に置き換わる
八行目、書板は「[異本]」――文字どおり「もう一つのバージョン」と注記して、後半に切り替わります。ここからはセム語(アッシリア語)で、神々の名も変わります。「アヌ、ベール、エアが、大いなる神々が、彼らの確かな助言によって、天と地の境界を定め、(そして)大いなる神々の手に委ねた、彼らが見ることのできる、日の創造とひと月の更新を、(そして)人類が、彼が出て行く門にいる太陽の神を見たとき、天と地のただ中に、彼らは(彼を)しかるべく創った。」(同8〜14行より)。アナ・エンリル・エンキに代わって、アヌ・ベール・エアという三柱が登場します。
ここでの「ベール」は、マルドゥクではない
気になるのは「ベール」という名前です。ほかの記事では、ベールはしばしばマルドゥクを指す称号として登場しました。しかし、この断片でアヌ・エアと並ぶベールは別人です。本書の用語解説は、神々の誕生を語る場面でのベールについて、「年長のベール、すなわちエンリルまたはイリルである」と説明しています。アヌ・ベール(エンリル)・エアという組み合わせは、マルドゥクが登場する以前から続く、より古い神々の三柱なのです。
月から太陽へ――入れ替わった主役
興味深いのは、この二つの版が、言語の違いだけにとどまらないことです。前半のシュメール語版は月の創造をめぐる場面でした。ところが後半のセム語版は、同じ枠組みのなかで、月ではなく太陽の創造を語ります。ひと月の更新への言及だけは両方に残っているため、もとは月について語っていた型を、太陽の場面に置き換えて作り直した跡が、うかがえます。
書板の裏面には、文法上・占星術上のいくつかの注記が刻まれていますが、保存状態が悪く、詳しいことはわかっていません。わずか十四行のこの断片は、バビロニアの書記たちが、同じ主題の異本を並べて書き写し、比較していたことを示す、貴重な証拠でもあります。
次の記事では、同じ「別の伝承」群の第四篇――創造の川そのものに呼びかける、呪文の冒頭の言葉を見ていきます。