ティアマトを討ち、その死体から天を造ったマルドゥク。しかし彼の仕事は、そこで終わりではありませんでした。天という「器」ができた以上、次はそこに、星々と時間そのものを配置していかなければなりません。第五書板は、この場面から始まります。ただしこの書板は欠損がとりわけ大きく、伝わっている部分も、出典の異なる複数の断片をつなぎ合わせたものです。
天の秩序を定める
本文はこう伝えます。
「彼(すなわちマルドゥク)は、大いなる神々のために持ち場を設けた。星々を、彼らの像として、黄道帯の星々として、彼は定めた。彼は年を定め、それを区分に分けた。十二の月のために、彼は三つの星を定めた。」(第五書板 1〜4行より抜粋)
マルドゥクは、神々一柱一柱に天における「持ち場」を割り当て、星座として配置していきます。一年を月に区分し、月ごとに対応する星を定め、さらに両側に大きな門を開いて、かんぬきを固め、天頂の位置を据えます。天は、ただの覆いではなく、暦と方位の仕組みそのものとして組み上げられていくのです。
このとき、マルドゥクは「ニビル」という星の持ち場も据えます。底本の注は、このニビルを「すなわち木星」と説明しています。天地を創造した当のマルドゥク自身が、木星という具体的な天体と結びつけられているわけです。
月に託された夜
「彼は月の神を輝き出させ、夜を彼に委ねた。彼は彼を、夜の存在として、日々を定めるために任じた。」(第五書板 12〜13行より抜粋)
マルドゥクは月の神に、満ち欠けによって日々を数える役目を託します。続けて、その数え方まで具体的に指示します。
「月の初めに、あなたが大地の上に輝くとき、あなたは角に、六日を定めるよう命じる」(第五書板 15〜16行より抜粋)
底本の注によれば、この「六日」という区切りは、前の行で月の神が「日々を定める」役目を任じられたこととも、この先で語られる七日目の務めとも、きちんと呼応しているといいます。この先、本文は月の運行と太陽との位置関係をさらに語ろうとしますが、後半にかけて欠損が広がり、詳しい内容までは読み取れません。
討伐の弓、天に掲げられる
この書板には、もうひとつ別の出典(K. 3,449aという断片)から取られた場面が続けて収められています。底本自身、この断片を「おそらく第五書板の一部をなす」という留保つきで、ここに置いています。神々が、マルドゥクがティアマトとの戦いで使った網と弓を、あらためて見つめる場面です。彼らはその出来映えをたたえ、アヌが神々の集会で弓を掲げ、それに口づけをして、名を与えます。
「『長い木』が一つの名となるだろう、そして二つ目の名は……そして三つ目の名は弓の星となるだろう、天において……」(第五書板 80〜82行より抜粋)
敵を討つための道具だった弓が、戦いが終わったあと、天に置かれ、星として名を持つ。武器が記念碑になる、この転換の場面のあと、本文は大きく欠け、書板の最後の13行は、神々の言葉の断片だけが残ります。ここで何が語られていたのか、直接には分かりません。ただし底本の注は、おそらくこう推測しています。神々は、マルドゥクが天に威光を授け、地上に草木を生かしたことは認めつつも、自分たちをたたえる神殿がなく、仕える者もいないことに、不満を漏らしたのだろう、と。
天と暦を定め終えたマルドゥクは、この不満を、どう受け止めたのでしょうか。次の記事では、彼が人間を創ろうと思い立つ、その動機を見ていきます。