解説本
アリストテレス『形而上学』を読む
問いでたどる解説本
アリストテレスの『形而上学』全十四巻を、原典の順に、一つずつ問いを立てながら読み進める解説本です。全十四巻38節。人は生まれつき知ることを欲する、という冒頭の一文から、先人たちの原因論の吟味、実体とは何かという探求、可能態と現実態、動かされることなく動かすもの、そして数とイデアの批判まで、アリストテレスの思考の道筋をたどります。
本文中の引用は、すべて古典書房の翻訳HTML『形而上学』の訳文によります。サイトで公開している記事は、この本の節の一部です。目次の「記事で読む」から、そのままお読みいただけます。
アリストテレス『形而上学』を読む
問いでたどる解説本
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目次
- はじめに(このページの下に全文を掲載しています)
- 第一巻(Α) 知恵とは何か、先人は原因をどう探したか
- 第二巻(α) 真理の探求について
- 1 原因をたどる鎖は、どこかで止まらなければならないのか
- 第三巻(Β) 難問集
- 1 なぜ、答える前に「行き詰まり」を並べるのか
- 2 原理は「類」なのか、それとも「構成要素」なのか
- 3 「一」や「存在」そのものは、実体なのか
- 第四巻(Γ) 存在するものであるかぎりの存在するもの
- 1 「存在する」という言葉は、なぜばらばらにならないのか
- 2 矛盾律は、なぜ証明なしに確かだと言えるのか
- 3 「人間は万物の尺度」は、どこで崩れるのか
- 第五巻(Δ) 哲学用語集
- 1 なぜ、一冊の中に用語の辞典があるのか
- 2 「原因」「実体」「可能」は、何通りに語られるのか
- 第六巻(Ε) 学問の区分と、偶然
- 1 なぜ「神学」が第一の学なのか
- 2 偶然には、なぜ学問が成り立たないのか
- 第七巻(Ζ) 実体とは何か
- 1 「存在とは何か」は、なぜ「実体とは何か」になるのか
- 2 本質とは、何のことか
- 3 形相は、なぜ生まれも滅びもしないのか
- 4 定義の部分と、物の部分は、どう違うのか
- 5 普遍は、なぜ実体ではないのか
- 6 音節は、なぜ字母の寄せ集めではないのか
- 第八巻(Η) 感覚される実体
- 1 「人間」は、なぜ「動物」と「二足」の二つではないのか
- 第九巻(Θ) 可能態と現実態
- 1 建てていない大工は、大工ではないのか
- 2 「見ている」と「見た」は、なぜ同時に言えるのか
- 3 現実態は、なぜ可能態より先なのか
- 第十巻(Ι) 一と多
- 1 「一」とは、なぜ「尺度」のことなのか
- 2 反対のものは、どれほど違っているのか
- 第十一巻(Κ) 要約の巻
- 1 なぜ、同じ議論がもう一度出てくるのか
- 第十二巻(Λ) 不動の動者
- 1 変化の下で、何が残るのか
- 2 動かされずに動かすものは、なぜ必要なのか
- 3 神は、何を考えているのか
- 第十三巻(Μ) 数学的対象とイデア
- 1 数学の対象は、どこにあるのか
- 2 数は、それ自体で存在する実体なのか
- 3 原理は、普遍なのか、個別なのか
- 第十四巻(Ν) 数とイデアの原理
- 1 永遠なものは、元素から成りうるのか
- 2 数は、善や美の原因になりうるのか
はじめに
アリストテレスの『形而上学』は、西洋哲学のなかで、もっとも多く名前を挙げられ、もっとも読み通されることの少ない書物の一つかもしれません。冒頭は、人は生まれつき知ることを欲する、という親しみやすい一文です。ところが読み進めると、難問の一覧があり、用語の辞典があり、同じような議論が別の巻でもう一度現れ、最後は数とイデアをめぐる細かな批判で終わります。どこに向かっている本なのかが見えにくい。多くの読者が途中で手を止める理由は、そこにあります。
読みにくさには、はっきりした理由があります。翻訳HTMLの概説でも触れたように、『形而上学』(メタ・タ・ピュシカ=自然学の後に置かれるもの)という書名は、アリストテレス自身が付けたものではなく、後の時代に著作群が編まれた際、自然学の書物の後に置かれたことに由来すると伝えられています。今日では、この書物は、はじめから一冊の本として書かれたのではなく、主題の重なる複数の論考が後から一つにまとめられたものと考えられています。筋が一本に見えないのは、読者の力不足ではありません。
それでも、全十四巻を通して読むと、一つの問いが繰り返し姿を現すことに気づきます。存在するものとは何か、という問いです。第一巻は、それを「第一の原因と原理を知る知恵」の探求として立て、先人たちの答えを吟味します。第三巻は、その探求が突き当たる行き詰まりを一覧にします。第四巻は、「存在するものであるかぎりの存在するもの」を扱う学を名指します。そして第七巻で、アリストテレスは、存在するものとは何かという古来の問いは、実体とは何かという問いにほかならない、と言い切ります。第七巻から第九巻の実体論、第十二巻の「動かされることなく動かすもの」、第十三・十四巻の数とイデアの批判は、どれもこの問いへの応答として読むことができます。
この本は、その道筋を、原典の順に、巻ごとに問いを立てながらたどるための案内です。本の区切りは、原典の巻そのものです。各巻の中は、その巻で立ち上がる問いを見出しにした節に分かれています。第五巻(哲学用語の辞典)や第十一巻(ほかの巻の議論を要約した巻)のように、通読の筋から少し外れる巻は短く扱い、そのぶん、第一巻と、実体を論じる第七巻に多くの節を充てています。一つひとつの推論をすべて追うことはしません。省いたところは、そうと分かるように書き、翻訳HTMLに譲ります。
本文中の引用は、すべて翻訳HTMLの訳文によります。引用のあとの(980a)などの記号は、ベッカー版の番号で、翻訳HTMLの「底本頁」表示と対応しています。気になった箇所は、ぜひ翻訳HTMLで前後を通して読んでみてください。この本は、原典を読む代わりではなく、原典を読むための地図として書かれています。
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