解説本

アリストテレス『形而上学』を読む

問いでたどる解説本

アリストテレスの『形而上学』全十四巻を、原典の順に、一つずつ問いを立てながら読み進める解説本です。全十四巻38節。人は生まれつき知ることを欲する、という冒頭の一文から、先人たちの原因論の吟味、実体とは何かという探求、可能態と現実態、動かされることなく動かすもの、そして数とイデアの批判まで、アリストテレスの思考の道筋をたどります。

本文中の引用は、すべて古典書房の翻訳HTML『形而上学』の訳文によります。サイトで公開している記事は、この本の節の一部です。目次の「記事で読む」から、そのままお読みいただけます。

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目次

はじめに

アリストテレスの『形而上学』は、西洋哲学のなかで、もっとも多く名前を挙げられ、もっとも読み通されることの少ない書物の一つかもしれません。冒頭は、人は生まれつき知ることを欲する、という親しみやすい一文です。ところが読み進めると、難問の一覧があり、用語の辞典があり、同じような議論が別の巻でもう一度現れ、最後は数とイデアをめぐる細かな批判で終わります。どこに向かっている本なのかが見えにくい。多くの読者が途中で手を止める理由は、そこにあります。

読みにくさには、はっきりした理由があります。翻訳HTMLの概説でも触れたように、『形而上学』(メタ・タ・ピュシカ=自然学の後に置かれるもの)という書名は、アリストテレス自身が付けたものではなく、後の時代に著作群が編まれた際、自然学の書物の後に置かれたことに由来すると伝えられています。今日では、この書物は、はじめから一冊の本として書かれたのではなく、主題の重なる複数の論考が後から一つにまとめられたものと考えられています。筋が一本に見えないのは、読者の力不足ではありません。

それでも、全十四巻を通して読むと、一つの問いが繰り返し姿を現すことに気づきます。存在するものとは何か、という問いです。第一巻は、それを「第一の原因と原理を知る知恵」の探求として立て、先人たちの答えを吟味します。第三巻は、その探求が突き当たる行き詰まりを一覧にします。第四巻は、「存在するものであるかぎりの存在するもの」を扱う学を名指します。そして第七巻で、アリストテレスは、存在するものとは何かという古来の問いは、実体とは何かという問いにほかならない、と言い切ります。第七巻から第九巻の実体論、第十二巻の「動かされることなく動かすもの」、第十三・十四巻の数とイデアの批判は、どれもこの問いへの応答として読むことができます。

この本は、その道筋を、原典の順に、巻ごとに問いを立てながらたどるための案内です。本の区切りは、原典の巻そのものです。各巻の中は、その巻で立ち上がる問いを見出しにした節に分かれています。第五巻(哲学用語の辞典)や第十一巻(ほかの巻の議論を要約した巻)のように、通読の筋から少し外れる巻は短く扱い、そのぶん、第一巻と、実体を論じる第七巻に多くの節を充てています。一つひとつの推論をすべて追うことはしません。省いたところは、そうと分かるように書き、翻訳HTMLに譲ります。

本文中の引用は、すべて翻訳HTMLの訳文によります。引用のあとの(980a)などの記号は、ベッカー版の番号で、翻訳HTMLの「底本頁」表示と対応しています。気になった箇所は、ぜひ翻訳HTMLで前後を通して読んでみてください。この本は、原典を読む代わりではなく、原典を読むための地図として書かれています。

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